川越城本丸御殿保存修理工事
工事の概要
川越城本丸御殿は、平成20年度から平成22年度にかけて約2年半の工期をもって保存修理工事を実施しました。ここでは、その概要についてお伝えします。
- 工事名 川越城本丸御殿保存修理工事
- 工事期間 平成20年10月20日から平成23年2月18日まで
- 工事種別 半解体修理工事
- 総工事費 約2億5千万円
- 受注業者 設計・監理 株式会社 文化財工学研究所
施工 松井建設株式会社 関東支店 - 工事内容
①屋根の修理
雨漏りが著しかったため、瓦を一度撤去して屋根の下地から貼り直しました。瓦は破損したものを選別して、再用しましたが、不足した分は新たに作りました。また、南側の鬼瓦は創建当初には無く、暫定的に別の瓦が据えらていたようですが、今回、北側の創建当初の鬼瓦の複製を作って、設置しました。
②基礎の修理
長い間に沈んでしまった基礎の据直しは、工事に際して地盤(史跡)を傷めてしまうことが懸念されるため、保護の観点から中止し、柱下と礎石の間に支い物(かいもの)を施すことで調整しました。調整に際しては、柱を1本ずつジャッキアップして柱の傾きを補正しながら行いました。
③木材の交換・修理
木材は文化財の一部であるため、原則として再用しましたが、雨漏りや虫食いなどで腐朽した木材のうち、被害が小規模なものは矧ぎ木などの細工で補修し、大規模なものは交換しました。
④壁の修理
創建当初からの壁が残っている部分を除き、壁をすべて解体して、新たに竹小舞を組んで伝統的な土壁を復元しました。
⑤建物の補強
耐震補強のため、小屋裏に水平方向及び垂直方向の筋交いを新設しました。また、床下では一部の外されていた貫を復旧し、あらたに補強土台を取り付けました。
⑥文化財建物としての独立
西側の家老詰所との通路を解体し、それぞれを独立した建物としました。また、南西側に接続する便所棟(現 明治棟)は小屋裏などに旧本丸御殿の部材が使用されており、解体してしまうと部材の資料価値が損なわれると判断されたため、解体前の状態で整備しました。 - 解体前と変わったところ
御殿内でご覧いただけるところを挙げてみました。ご来館の折に確認してみてください。
①玄関唐破風
正面玄関の屋根は銅板を葺き直しました。中央の「葵の文」も金箔を貼り直しています。
②広間
解体前は座敷部分への入室をご遠慮いただいていましたが、現在は広間のみ入室可としました。床の間の巨大な壁や杉戸絵を間近でご覧いただけます。
③使者の間・使番詰所
両室の間の間仕切りは、解体時の調査によって壁だった部分も引き戸であったことが分かりました。そのため、今回の保存修理工事で引き戸として復元しました。
④明治棟
解体を取止めた便所棟は外観を復元的に改修し、内部の間仕切り(まじきり)も当初に復元しました。室内は今回の保存修理工事の資料による第1展示室と多目的トイレを含むトイレ室を設けました。
⑤家老詰所への通路
6-⑦で記しました文化財建物としての独立を図るため、家老詰所への通路をウッドデッキ風の簡素な形に変えました。これによって、家老詰所や裏庭を違った角度からご覧いただけるようになりました。
保存修理とは
川越城本丸御殿は「埼玉県指定有形文化財」です。今回の工事は保存修理工事として、その建物の歴史的な変遷を調査し、それを踏まえて当時の工法によって修理を実施しました。実際、建物のどの部分がどうなっていたか、どのように修理したかを記録してきました。これらをまとめた修理報告書を現在作成中です。しかしながら、この報告書は専門的な内容になりますので、一般の皆さまには本丸御殿の保存修理工事の内容が分かりやすくご覧いただけるような「概要版」を合わせて作成しています。また、保存修理の過程を映像で紹介しているDVDの頒布も実施しています。詳しくは博物館・本丸御殿の受付までお申し出ください。
約2年半の保存修理工事中は、たくさんの方々ご迷惑をおかけしました。工事完了後、3月11日の東北地方太平洋沖地震に見舞われましたが、壁の一部にひびが入る程度で、川越城本丸御殿は甚大な破損・被害はありませんでした。しかし、大地震発生の可能性がなくなったわけではなく、これからもこの本丸御殿が残るように、また、ご来館いただいたみなさんが安全に見学できるように努めていきたいと思います。これからもよろしくお願いいたします。








